営業に不可欠な「質問力」を鍛える 【後編】

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~「質問力」を磨く『SPIN話法』~

前編では、なぜ「質問力」が必要とされるようになったのか、についてご説明しました。いよいよ後編では、具体的にどのように質問を進めていけば良いかお話ししましょう。

←営業に不可欠な「質問力」を鍛える 【前編】はコチラ!


近年、「質問力」を磨くセールス技法として注目されている、『SPIN話法』をご存知でしょうか? 営業パーソンの行動様式を統計分析した、イギリス人行動心理学者のニール・ラッカム氏によって開発・体系化されました。

①状況質問(Situation Questions)   相手の現状を理解する

②問題質問(Problem Questions)   ニーズを明確にし、相手に気付かせる

③示唆質問(Implication Questions)  問題の重要性を認識させる

④解決質問(Need payoff Questions)  理想の状態をイメージさせる

4段階それぞれの頭文字をとって、『SPIN話法』と呼ばれています。

「状況質問→問題質問→示唆質問→解決質問」の順で質問を行うことで、相手の潜在的ニーズを顕在化させ、問題解決への欲求を高めることができます。特に大きな商談を進める場合には、このステップで質問すると効果的です。相手にとっては、質問に回答することで頭の中が整理され、購入意向が高まりやすくなります。

『SPIN話法』は、「商品やサービスを熱心に売り込む」ための話法ではなく、「問題を明確化し、課題解決の重要性と理想の状態を共有する」ための話法です。

①状況質問(Situation Questions)   相手の現状を理解する

②問題質問(Problem Questions)   ニーズを明確にし、相手に気付かせる

『SPIN話法』では、まず相手の潜在的なニーズや困り事を引き出していきます。

まずは相手の現状や環境について、客観的事実・情報を取得するための質問から始めましょう。いきなり「何か困っていることはないですか?」と聞いても答えようがありません。相手の状況をしっかり聞き(S/状況質問)、気がついた問題点に関して「◯◯に関してお困りではありませんか?」と質問します(P/問題質問)。すると、「そうそう!そこに困っているんだ」と相手が問題点に気づきやすく、話題も広がります。

③示唆質問(Implication Questions)  問題の重要性を認識させる

次に、その困り事によってどんなトラブルが起こり得るか、リスクを冷静に分析し、解決の重要性を認識してもらう質問を投げかけます(I/示唆質問)。

④解決質問(Need payoff Questions)  理想の状態をイメージさせる

そして最後に、「解決には何が必要ですか?」と質問(N/解決質問)し、相手に理想の状態をイメージしてもらった上で、「お望みの状態は、弊社の商品(サービス)で解決できます」と、具体的な営業に結びつけていきます。

確実に自社製品やサービスの売り込みに結びつけるためには、S(状況質問)で引き出した状況から、いかにスムーズにN(解決質問)につながるP(問題質問)とI(示唆質問)を見つけられるかが重要なポイントになります。

 「S(状況質問)からP(問題質問)とI(示唆質問)、そしてゴールにつながるN(解決質問)」の流れを的確にとらえられる「質問力」が身につけば、商談を効率的で効果的に進めることができます。

『SPIN話法』のポイントと注意点

【S】状況質問

状況質問は現状に関する情報を得るのが目的ですが、相手にとっては今まで何度も繰り返してきた答えかもしれません。状況質問ばかり立て続けに投げかけると、相手をうんざりさせてしまうリスクがあります。

・会社概要やトップのメッセージなど事前にわかる情報は、公式サイトや検索サイトなどで事前に調べる。上場企業の場合、IR情報にも必ず目を通しておく。

・事前に質問を絞り込み、「○点ほどお尋ねしてよろしいでしょうか?」と前置きをする。

 

【P】問題質問

相手が抱えている問題点や不満を、深く掘り下げる質問です。

例/「現在のシステムの使い心地はいかがですか?」

「長年こちらの製品を使い続けることに関して、何か問題点はありませんか?」

言い方次第では、失礼にとられる可能性もあります。失礼だと受け取られないためには、「問題点を教えていただければ、私たちがその問題解決に向けて全力で力になります」という思いを真摯に持つことが大切。その思いは言葉や態度で、相手に伝わります。

短期少額商品の営業であれば、すぐに商品説明に進んでも結果に結びつく可能性があります。しかし長期で高額な商品の場合、ここで売り込んでもあまり受注率は変わりません。なぜなら、この時点ではまだニーズは潜在的で、購入意欲まで高まっていないからです。

【I】示唆質問

質問によって潜在ニーズを顕在化させ、発覚した問題が抱えるリスクの大きさや深刻さを理解してもらいます。基本は「このまま何もしないで大丈夫ですか?」という投げかけ。ここでも「問題点を教えていただければ、私たちがその問題解決に向けて全力で力になります」という思いが、相手に伝わることが重要です。

例/「サーバーの動きが遅いことで、実際にどんな影響が出ていますか?」

「その問題は、営業部のみなさんの無駄な仕事を増やしていませんか?」

現状に満足している相手の潜在ニーズを、顕在化させることによって、「買いたい」「サポートしてほしい」という気持ちを喚起します。

【N】解決質問

相手が気づいた問題が、解決したときに得られるメリットについて確認する質問です。

◎ポイント1
問題解決によって得られる、コスト以上の付加価値に気づいてもらうため、【I】示唆質問の裏返しのような質問をする。

例/「サーバーの動きが早くなることで、どのような良い影響がありますか?」
「問題を解決することで無駄な仕事がなくなり、みなさん喜ばれるでしょうね?」

◎ポイント2
問題が解決して得られるイメージを、相手と共有できるような質問をする。

例/「この問題が解決したら、みなさんの業務はスムーズに運ぶようになりますか?」

製品(サービス)購入によって得られる利益は、営業パーソンが語るより、相手に言葉にしてもらった方が、インパクトがあります。

『SPIN話法』がもたらすメリット

『SPIN話法』のメリットは、単に商談成立の確率が高まるだけではなく、営業パーソンが相手から「頼りになる存在」として信頼される点にあります。便利な商品やサービスを売るだけではなく、相手が問題に気づき、解決方法にまで思いを巡らせることで、あなたのことを「今、本当に必要としていたものを提供してくれた人」と認識できます。

「頼りになる存在」になれば、今後何か困ったことや問題が発生したときに、相談したいと思ってもらえます。より深く相手との関係を構築でき、競合する商品やサービスが出てきても、「あなたから買いたい」と選ばれる。これは営業パーソンにとって大きな成功体験になるでしょう。

スムーズに質問するために

◎マナーを忘れない

事前に「何点か質問させていただいてもよろしいでしょうか」と、一言添える。

◎質問は、短い言葉で明快に

相手に失礼のないよう丁寧に話そうとするあまり、ダラダラと何が言いたいのかわからない質問をする人がいます。面談や商談はリズムが大事。一般的に、質問が長いほど回答は短く、質問が短いほど回答は長いという傾向があります。情報を多く得たければ、明快で短い言葉の質問を心がけましょう。

◎質問でも会話のキャッチボールをする

一方的に矢継ぎ早に質問するのではなく、相手の回答を受け止め、それを深める質問をしましょう、相手が発した言葉(単語)を繰り返しながら、質問を返すのもひとつです。

相手「社内でちょっと問題が起きている」

営業「社内で?どのような問題ですか?」

相手「営業部から、処理速度が遅いと言われてね」

営業「営業部から?ほかの部署からも何か声が上がっているのですか?」


「話す」ことが重視されがちな営業ですが、実は、「聴く」ことを意識した方が、本当に必要な情報が得られ、的確な提案につながりやすくなります。「聴くが7割、話すが3割」のイメージで「質問力」を鍛え、信頼される営業パーソンをめざしましょう。