営業成績を伸ばす、基礎力とは 【前編】

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~商談成功のカギを握る「準備力」~

モノを売る時代から、価値を売る時代へと、時代は完全に移り変わりました。かつてはアポイントが取れ、商品説明の機会さえ得られれば、大抵の場合モノが売れましたが、現在は消費不振の影響や情報量の増大とともに、簡単にはモノが売れなくなっています。

こうした状況下で求められるのは、課題解決方法(ソリューション)を提案できる営業パーソンの存在。そこで注目されているのが、「準備力」と「質問力」です。いずれも基本的なスキルですが、その基本さえ身についていない営業パーソンが少なくありません。

そこで、前編で「準備力」、後編で「質問力」について、その重要性を考えてみたいと思います。あなたの営業成績を向上させるヒントを、ぜひ見つけてください。


事前準備次第で商談の成否が決まる

 三流の営業は、事前準備なしで商談に臨む

 二流の営業は、情報収集に満足して商談に臨む

 一流の営業は、情報をもとに仮説を立てて商談に臨む

商談で何より重要なのが、事前準備と言われています。なぜなら、事前準備次第で商談の成功率が大きく変わるからです。商談の目的を見定め、どのような流れで話を進めるのか事前にシナリオを準備することは、営業パーソンにとって当然と言えば当然です。そのシナリオを作成するために、「商談相手の情報を収集する」「自社の商品・サービスについて端的に説明できるようにしておく」「相手の質問を想定し、回答を用意する」といったポイントをしっかり押さえておく必要があります。

そして、商談相手のニーズを想定し、仮説を立てておくことが大切です。訪問し、相手の反応を見てから対処を決めるのでは遅すぎます。事前に仮説を立てておけば、商談の流れをリードできます。事前準備とは、ムダなく効率的に、より高度な商談を進めるために欠かせないプロセスなのです。    

 

社歴の浅い若手社員の事前準備に漏れがある、また、モチベーションが上がらない原因としては、次の3点が考えられます。

①どんな準備したら良いのかわからない

②事前準備の重要性を理解していない

③事前準備をしてうまくいった成功体験が少ない

①は、簡単なチェックシートを作成することで解決できそうです。②と③は、なかなか教えにくいポイントでしょうが、事例を交えるなど工夫次第で事前準備への認識を深めさせることは可能です。「事前準備は時間もかかるし、めんどうだ」と感じる人もいるでしょう。しかし、営業活動においてファーストコンタクトはとても重要です。こうした取り組みを地道に行いながら、若手社員を含めたチームの営業力をボトムアップしたいものです。

まずは、商談相手の情報を収集することから始めましょう。正確な情報を把握しておくことは、商談の成功率を上げるだけでなく、情報の集積によって社内の業務効率化を進めることにもつながります。

●商談相手の情報

 ◎BtoB(対法人)の場合

  事業内容、規模(従業員・資本金)、商品、サービス内容、業界の動向・ニュース・トレンド、

  競合他社の状況や動き、類似企業の状況や動き、過去の取引や商談実績、

  担当者や経営陣・部署のメッセージ、商談相手のSNS

 ◎BtoC(対個人)の場合

  家族構成、地域特性、SNS等の発信、統計情報、商談相手と類似した人の動向や状況

●想定できる課題の事柄を洗い出す

 ・競合他社や、類似した規模の取引先の状況を確認し、課題を抽出する

 ・業種や規模などから、問題点を予測する

 ・SNSやメディアで、課題や問題点などに関する発信がないか確認する

●商談相手の課題解決の優先順位や意思決定基準を予測する

 ・課題や問題点に関して、解決すべき優先順位を予測する

 ・SNSやメディアでの代表者や責任者の発言から、価値基準を把握する

●課題と優先順位をもとに、提案内容を整理する

 ・自社サービスで実現できることは何か、整理しておく

 ・どんな言葉や順番で伝えるべきかイメージする

●仮説が思いつかない場合

 仮説がわからない場合は、商談相手に事前に電話で直接尋ねるのが一番。

 また、商談相手と類似した企業の知人に聞く。上司や先輩に相談してみる。 

商談相手や競合先に関する情報や業界動向を把握する上では、インターネットの活用が有効です。既存データや各種メディアの掲載記事、また一般の新聞・雑誌、業界紙、専門誌などで情報を得ながら、市場や社会の流れを観察する習慣を身につけましょう。その他、官公庁や業界団体、金融機関などが発表している、統計データやレポートも重要な情報源になります。

競合先や市場の動向を把握する

紀元前500年前の兵法書『孫子』の一節に、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」とあるように、競争に勝つには競合先の動向を徹底的に調査・分析することが重要です。ビジネスにおける分析手法の一つである「3C分析」を活用しても良いでしょう。この「3C分析」をまずは自社に照らして自社の現状と課題、それに基づいて現在とられている戦略・戦術の意味を理解し、さらに自分が果たすべき役割をしっかりと把握しましょう。

→ 【参照】:「勝つ戦略」に役立つフレームワーク【前編】

自社や自分自身の課題が明らかになったら、同じように商談相手に「3C分析」を当てはめます。客観的な視点から現状を分析することで、商談相手が今後進むべき方向性が見えてくるはずです。

その課題解決プロセスに、自社の製品やサービスがどんなメリットをもたらすのか具体的にイメージしながら、実際に提案するシナリオを作成します。

 

◎Competitor(競合)分析

 ・競合先と考えられるのはどの企業か?

 ・競合先の状況は?(年商・シェア・社員数・生産能力など)   

 ・競合先の商品・サービスの優位点、また劣る点は?   

 ・競合先が進出していない市場やニーズがあるか?     

 ・競合先の今後の展開は?

◎Customer(市場・顧客)分析

 ・商品、サービスの市場認知度・シェアはどの程度か?        

 ・市場の属性(年代別、性別、地域別など)は?       

 ・市場規模は現在、伸びているのか?         

 ・顧客が商品、サービスを選択するポイントは何か?          

 ・顧客の志向やライフスタイルに変化はあるか?       

 ・商品、サービスに影響を与える外部環境変化はあるか? 

Company(自社)分析

 ・自社の経営資源や活動の現状を把握しているか?     

 ・自社の商品特性を理解しているか?  

 ・自社の売上、シェア等の市場地位を把握しているか? 

 ・自社の強み、弱みを理解しているか?今後の戦略は立っているか?

しかし、「3C分析」に必要以上の時間はかけないよう注意が必要です。分析に気を取られ、機動力が発揮できないのは営業として本末転倒です。大切なのは、常にこうした視点で物事を見る〝目〟を養うこと。漫然とではなく、意識してとらえるうちに、物事に対する興味や好奇心のアンテナが磨かれていきます。

仮説を立て、シナリオを作り、商談に臨む

繰り返しますが、「情報収集をした」「営業資料をまとめた」だけでは不十分です。営業が行う事前準備とは、「仮説を立て、商談のシナリオを作ること」を指します。

アポイントが取れた、相手から連絡をもらった時に考えなければならないのは、「相手があなたに何を期待しているのか」という点です。それが把握できれば、商談のシナリオも自ずと変わります。一般的に、商談において相手が期待するのは次の3項目です。

【商材】

商談相手は、あなたの商品やサービスがどんな効果やメリットをもたらすのかを知りたがっています。商材自体を知りたいわけではありません。ここを勘違いすると、相手の本音を置き去りにしたまま、商材自慢を延々と続ける羽目に陥ります。

【トーク】

あなたがもたらす情報や話題に関心があるケースです。もちろん、つまらない話より面白い話を聞きたいに決まっていますが、お笑い芸人のようなトークを期待しているわけではありません。大切なのは、相手が聞きたい話を聞きとりやすいトーンとテンポでわかりやすく話すこと。決して難しいことではありません。

すぐに取引の需要は無いけれど、こうしたコミュニケ―ションを通じて親近感や信頼関係を構築することで、相手にあなたの存在価値を実感させることができます。

【人柄】

仕事とは言え、人間には相性があります。好き嫌いがあるのも自然なことです。相手がどういう人と話をしたいのか意識すると、相手とのリレーションを深めることができます。

共感を通じて心の距離を縮めるのが一般的ですが、時には、客観的で冷静な意見が欲しいと相手が思うときもあるでしょう。相手の様子や反応を観察しながら、硬軟織り交ぜた意見で相手に刺激を与え、あなたの存在感を示すことができます。言葉には出さなくても、「話せて良かった」という満足した感触が相手の表情から伺えたら、その日のアポイントは成功です。こうして培った信頼関係が、後々の大きな商談や紹介につながることは珍しくありません。「モノを売る前に、人を売る」という、営業の本質の実践でもあります。

事前準備の仮説は、仮説でしかない

事前準備で仮説を立てるのは、商談の質を高めるためですが、仮説が合っていたかどうかはさほど重要ではありません。事前準備が必要な理由は、あなたのアンテナを商談相手に向け、具体的な提案内容を考えた上でしっかりと心を添え、相手に向き合うためです。たとえ仮説が違っていても、それをきっかけにより深いヒアリングにつなげることができます。仮説はあくまで仮説です。しかし仮説をきっかけに相手との会話の質を高め、より深い話をする。それが商談における事前準備の意味なのです。


営業経験が長くなれば、自分なりの事前準備や仮説の立て方が自然にでき、効率的な営業活動を進めることができるでしょう。しかし、まだ経験が浅い、なかなか営業成績が伸びないという人は、基礎的なスキルである「準備力」を磨くことに注力してみて下さい。

後編では、商談の場面で発揮したい「質問力」について解説する予定です。