「勝つ戦略」に役立つフレームワーク【前編】

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マーケティング戦略を立てるとき、調査結果を整理し、具体的な戦略に落とし込む上で役立つのが、「フレームワーク」と呼ばれる分析手法や思考の枠組みです。しかし、その意味を的確に理解しないまま使っても、有効に活用することはできません。前編と後編にわたって、現状分析と戦略構築に役立つ「3C分析」と「SWOT分析」を通じて、フレームワークの有効な活用について考えてみましょう。


~3つの視点で特徴を把握する「3C分析」~

Competitor(競合)/ Company  (自社)/ Customer (市場、顧客)    
それぞれ3つのCで始まる軸に沿って現状を分析し、見つけ出した特徴をもとに、自社の強みと弱みを特定するのに便利なフレームワークです。

Competitor=競合」

実際の競争状況や競合他社について詳細に分析し、それに対して自社がどのような点で競合他社に対して差別化できるか考えます。

Company=自社」

自社の経営資源や強みについて把握します。市場の変化に対し、自社と競合企業がどのような対応をしているか比較してみます。

Customer=市場、顧客」

顧客の購買意思や能力を分析します。具体的には、市場規模や成長性、各ターゲットのニーズ、購買プロセス等に視点を置きます。

競合との比較を通して、自社の強みと弱みを分析する

では、どのように「3C分析」を行うか、具体例を紹介します。ここでは例として、自営する喫茶店で新たなランチメニューを売り出す戦略について考えてみましょう。

長年喫茶店を営んできたが、先月、大手喫茶チェーンが近所に出店し
自店の売上が減少傾向にある。

この事例について、「3C分析」を利用してどのような対策を行うと良いでしょうか。さっそく、3つのCの視点で情報収集を行い、分析していきます。

Competitor=競合」

まずは、他店の強みと弱みを徹底的に調べ上げます。特に弱みは、自店が入り込むチャンスが見えてくる可能性があるので、しっかり調査しましょう。
a、営業時間は、大手チェーンの方が長い
b、平均単価を見ると、平均150円ほど大手チェーンの方が安い
c、接客はマニュアル的で、アルバイトと顧客の間に深い関わりは見られない。
d、メニューは一般的なものが中心で、特にこだわった看板メニューは無い。
ここで見えてくる競合の特徴は、「aとbが強み、cとdが弱み」という点です。

Company=自社」

上記から得た競合の弱みを自社がカバーすることで、大手チェーンとの差別化が図れないかを考えます。そこで、お客さまにアンケートや聞き取り調査を行ったところ
・自店メニューの美味しさや接客の良さは、OLや学生を中心に定評がある。
・自店は大手チェーンより平均単価が少し高いが、それに見合うと評価されている。
ことが、わかりました。

Customer=市場、顧客」

上記の「Competitor(競合)」と「Company(自社)」の分析から、自店がターゲットにすべきは
接客とコストパフォーマンスが良く、美味しさを求める女性や学生
と仮説を立てることができます。そこで、この仮説が正しいかどうか、再度調査して検証を行っていきます。本当に女性の評価が高いのか、接客の良さが足を運ぶ要因につながっているかを検証するのです。実際にこの仮説が正しいと確認した上で、新たに女性や学生向けのメニューや、きめ細かな接客マニュアルをつくるといった戦略へ落とし込んでいきます。

このように「3C分析」は、

Competitor(競合)/ Company  (自社)/ Customer (市場、顧客)

の3点における実態から得られた特徴をもとに、自社の強みと弱みを特定し、具体的な戦略に落とし込んでいきます。戦略立案においては、強みを徹底的に生かす戦略を立てましょう。もちろん弱みを減らすことは大切ですが、自社の弱みは他社の強みです。そこで戦っても勝算は低くなります。強みを生かし実績を上げることで組織が強くなれば、弱みを補う人材や商材、時流などさまざまな面で変化が起きることも期待できます。何より、強みを生かして戦略展開する方が、社内の士気が上がります。

「3C分析」が活用しにくい理由とは?

上司から求められ、実際に「3C分析」をやってみる方は少なくありません。しかし、すべての方が「3C分析」をうまく活用できているとは言えません。考えられるのは、以下のような要因です。

情報収集の難しさ

「3C分析」は3つの視点<Competitor=競合、Company=自社、Customer=顧客>をそれぞれ分析しますが、そのためには広く情報を収集し、分析可能な量の情報があることが前提になります。実は、この情報収集に予想以上の時間がかかり、3C分析が進まないことが多いようです。組織規模が大きい場合、分析者自身が自社の事業について実態を把握できていないことさえあります

BtoBゆえのサンプル数

事業形態がBtoB(対法人営業)の場合、BtoC(対個人営業)に比べて、サンプルを集めにくいことがあります。取引社数が少ない、競合の情報が公開されていないといった理由で、分析に必要なデータ収集が進まないケースも珍しくありません。顧客への理解が重要であるにもかかわらず、収集したサンプル数が少ないため、有効な情報分析ができないという難しさがあるようです。

時間的な制約

正しい情報を突き止めるまでに時間がかかり、その間に市場が変化してしまうこともあります。たとえ正しいと確信して分析を行ったとしても、それが間違っている可能性は十分にあります。すぐに正解にたどり着ければ良いのですが、仮定と検証を繰り返すのが一般的です。限られた時間の中で「この情報、仮定、検証は正しいか?」という意識を持ち続けることが重要になります。

3C分析活用のための3つのポイント

「3C分析」を進める上で、忘れてはならないポイントが3つあります。

 2つの視点を持つ

2つの視点とは、「全体を見通す大まかな視点(マクロ)」と「具体的に細かな点を見る視点(ミクロ)」。例えば「Customer(市場・顧客)」では、市場規模や事業実績など数字でとらえられる情報は比較的手に入れやすいと言えます。一方、ターゲットイメージやその層が顧客である理由など、数字で表しにくい点は見逃しがちです。マクロの視点とミクロの視点から、冷静な分析を心がけましょう。

  情報の取捨選択

2つの視点は、情報の取捨選択にも大いに役立ちます。時間的制約の中で分析結果を有効な戦略に落とし込むためには、情報の取捨選択がカギになります。ミクロな視点とマクロの視点を同時進行させながら、全体を俯瞰しましょう。そして、「本来の目的」を思い返してください。そうすれば、「この層の動きは無視できない、深く掘り下げてみよう」など、絞り込んだ分析がしやすくなります。

  3つの「C」の一貫性

各「C」を切り離して分析すると間違えやすくなります。例えば、社内の感覚だけで自社の強みや弱みの分析を行い、市場や競合の分析から導いた結果と大きくズレていた、といったことがしばしば起こります。自社の強みや弱みは、市場や競合とのバランスを通して初めて見えてくるものです。社内で強みにしたい部分が、すでに競合においてかなり優れている場合、差別化戦略にはなりません。


「3C分析」などフレームワークを活用できれば、確かに見た目にきれいな戦略は立てやすくなります。しかし、実行できない戦略はビジネスにおいて何の価値もありません。常に「実行に移すための分析」ということを意識していれば、自社の資源や顧客から寄せられる自社のイメージに関して、客観的で具体的な分析ができるはずです。実行に移すまでが「3C分析」ととらえ、分析をくり返して精度を上げることが重要だと言えます。

後編では、もう一つの基本フレームワーク「SWOT分析」について、その意義と具体的な進め方についてご紹介します。

「勝つ戦略」に役立つフレームワーク【後編】SWOT分析についてはコチラ!→