『“弱者逆転の法則”ランチェスター戦略入門シリーズ③』
【VOL3】 ランチェスター「第一法則」と「第二法」
前回は、ランチェスター戦略の原点である、戦闘の法則「ランチェスター法則」と戦争の法則「クープマンモデル」について解説しました。
その際、「ランチェスター法則」は2つの法則から成り立っているという風に説明いたしましたが、今回は、その2つの法則について、それぞれ見ていきたいと思います。
●ランチェスター「第一法則」とは?
皆さんは、戦いというのは、大きく2つに分けることが出来るのをご存じでしょうか?
1つは、「1対1」の戦い。もう1つが「集団対集団」の戦いです。
「1対1」の戦いというのは、限定された狭い範囲での戦い(局地戦)であり、武器は単発兵器(刀や槍の様なもの)、それが一騎討ち型で戦う状況を指します。
また、「集団対集団」というのは、大人数が広域で、確率兵器(機関銃の様な一度に何人も殺傷できるも
の)を持ち、一斉に撃ち合うような戦いを指します。
さて、どちらの戦いにおいても勝つのは常に力関係が強い方です。つまり、「戦闘力」が高い方が勝つということです。これは非常に単純明快です。
では、「戦闘力」とは何によって決まるのか?
これを決定づけるのは、「武器の性能」と「兵力数」です。
したがって、「戦闘力」=「武器の性能」×「兵力数」という方程式で示すことが出来ます。
例えば、同じ刀や槍の様な武器(単発兵器)を持ったM軍5名とN軍3名がいたとします。兵士の実力もほぼ同程度だったとして、お互い1対1ずつでどちらかが全滅するまで戦ったとしたらどちらが勝つでしょうか?
勝つのは当然、戦闘力の高いチームとなります。この場合は、M軍:(武器性能を仮に1とする)1×(兵力数)5人=“戦闘力5”となります。これに対して、N軍は、(武器性能は同じで1)1×(兵力数)3人=“戦闘力3”となります。
つまり、兵力数の多いM軍が戦闘力が上回っている為、勝利します。ですが、損害量に関しては、同じ3名となります。(実力が同じなら相打ちとなる為)要は、兵力数が多い方が、多い分だけ残して勝つ。(損害量に関しては武器性能が同じであれば変わらない)
これが「第一法則」が支配する状況下での戦闘の結果です。
「第一法則」では、武器の性能が同じであれば兵力数が多い少ないに関係なく、倒される兵力数は同じである・・・このことをしっかり覚えて置いて下さい。
では勝つ為にはどうすれば良いのかというと、1つは「武器の性能を上げる」もう1つが「兵力数を増やす」ということになります。数の少ないN軍が勝つ為には、武器の性能を兵力比よりも高めれば勝てるということになります。
ところが、もう1つの「集団対集団の戦い」ではどの様な結果になるか?
こちらは「第二法則」という法則性が適用されます。
●ランチェスター「第二法則」とは?
「集団対集団」が、確率兵器(機関銃など一度に何人も殺傷できる武器)を用いり、広域で一気に撃ち合うといった状況の戦いになると、その損害量はまるっきり変わってきます。
結論から言うと、この状況下では、先ほどの「戦闘力」を決める方程式が、「武器性能」×「兵力数の2乗」という数式に変わります。
これこそが「ランチェスター第二法則」です。
第一法則と異なる点は、「兵力数」が「2乗」になっているという点です。これは、第二法則が適用されるような状況下においては、兵力の数(量的要素)が2乗に作用することを意味します。
では、第一法則と同様、同じ腕前で同じ武器を持った兵隊同士が、M軍:5名、N軍:3名でどちらかが全滅するまで戦ったとするどの様な結果となるか?
第二法則の場合、兵力数が2乗になる為、その戦闘力の差は大きく変わります。
・M軍の戦闘力=武器性能1×兵力数5の2乗=25
・N軍の戦闘力=武器効率1×兵力数3の2乗= 9
※第一法則下では「5対3」だった差が、第二法則下では「25対9」の差となってしまう。
数が多い方が戦闘力が高いということは第一法則と変わりありませんが、第二法則の場合は、兵力数が2乗に作用しますので、ただ有利なだけでなく、圧倒的に有利となります。逆に数の少ないN軍は、敵に大した損害量を与えることなく壊滅してしまいます。
つまり、第二法則の適用下の場合、ちょっとやそっと武器の性能を上げたところで、小が大に勝つことは不可能です。したがって、兵力数の少ないもの(小)は、第一法則型(局地戦・一騎討ち戦・接近戦)で戦うことで、圧倒的に不利な状況を回避し、何かしら武器性能を上げ、そこにおいて兵力数を集中させることが求められます。
逆に言えば、兵力数が劣る場合は絶対に第二法則が適用される状況下での戦いを挑んではいけないということです。
実は、FWランチェスター氏は、「戦闘力」を決定づける「武器性能」と「兵力数」について、その戦闘における損害量を観ていくこで、2つの法則が成り立つことを発見したというわけです。
●まとめると・・・・
兵力数が多いもの(大)は第二法則で戦うことによって、圧倒的に有利な状況をつくり、確実な勝ち方をものにする。
⇒「大」=第二法則(広域戦・確率戦・遠隔戦)
兵力数の少ないもの(小)は、第一法則で戦い、同時に武器効率を高め、そこに兵力を集中する。
⇒「小」=第一法則(局地戦・一騎討ち戦・接近戦)
以上が勝つ為の原則となるということを忘れないで下さい。
さて、これはそっくりそのままビジネスにも当てはまります。
ビジネスをやっていると、どうしても直ぐに日本全国・業界全体といった視点に目が行きがちですが、実際に「小」が市場で勝つ為には、企業の規模感(量的要素)が直接勝敗を決めてしまう第二法則が適用される市場ではなく、やり方次第で勝つことが可能となる第一法則が適用される市場でビジネスを展開することが必須です。
その為に、まずはビジネス領域や地域を絞り込む、客層や商品カテゴリーを細分化するなどを徹底し、そこに重点化・集中化していくことが求められます。
小さくても勝っている企業はまさにそのような戦い方をしています。身近な企業で当てはまる例なども是非チェックしてみて下さい。
NPOランチェスター協会常務理事 副研修部長(認定インストラクター)
相模女子大学非常勤講師、 澤田経営道場講師兼選考委員
ランチェスター戦略学会役員 リレーションステージLLP(代表)
広告代理店にて、営業・プランナーとして数多くの大手メーカー及び
流通企業等の成功企画を手掛ける。
雑誌・TVなどにも取り上げられた企画も多数。
現在はコンサルティング及び研修講師をはじめ、
執筆・講演など幅広く活躍中。相模女子大学では
「メディア産業論」「e-ビジネス論」の講義を担当。
ライフワークである「戦国武将・幕末維新に学ぶシリーズ」も人気講座として定着。
公益財団法人澤田経営道場のカリキュラム及び教育全般も担当。
その他、マーケティングカレッジ等でもレギュラー講師を務める。
●主な著書等
『ジャパネットたかたすごい戦略』(あさ出版)
『しくじり企業も復活する7つの大原則』(ビジネス社)
『まんがで身につく!ランチェスター戦略』(あさ出版)
他多数
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2020.03.04
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