『“弱者逆転の法則”ランチェスター戦略入門シリーズ⑨』
【VOL9】 地域戦略のポイント①
ランチェスター戦略には、いわゆる「エリアマーケティング」の発想とはちょっと違う、独特の「地域戦略」の考え方が存在します。今回は、そんなランチェスター戦略における「地域戦略のポイントについて解説していきたいと思います。
●弱者の基本は、まずは「地域戦略」!!
ランチェスター戦略では、弱者の基本戦略は“差別化”であると定義付けしています。
とはいえ、“差別化”と一言で言っても容易ではありません。
ではどうずれば良いのか?
その1つの切り口が「地域戦略」です。
競合に対し、何をどう差別化すれば良いのかわからないということであれば、まずは自社(あるいは営業自身が)が営業範囲(テリトリー)として設定している地域を細分化してみることです。
その際、まず地図を広げて見る事から始めてみて下さい。
恐らく、皆さんはかなり広範囲なエリアを営業として担当しているのではないでしょうか?
もちろん、中には絞り込んだ狭い範囲を営業テリトリーとしている企業もあるかも知れませんが、その多くはかなり広いエリアを担当している(させられている)パターンが見受けられます。
したがって、まずはその広域な営業テリトリーを細分化してみる事から始めて行きます。
ランチェスター戦略の基本的な考え方は、自らが設定した戦場(市場)において、一点集中することで「質」と「量」を高めていくことで他を凌駕します。
リソースの乏しい弱者の場合、市場が大きくては当然「質」も「量」も分散してしまい、高めることは困難です。
それを回避する意味でも、市場を絞り込む必要が有るわけです。
また、市場の定義も多々あるわけですが、弱者にとって、その絞りこむ市場をまずは「地域」に絞り込むことが最も取り組みやすい戦略と言えます。
これによって、営業担当の活動量を劇的に増やすことが可能です。
無論、集中化することで、質的要素も高めやすくなります。
あるいは、良質転化の法則という言葉の通り、「量」をこなすことで、やがて「質」も高まっていく・・・そのような効果も期待できます。
●地域の細分化と重点化
ここから、地域戦略の基本的なプロセスについて解説致しましょう。
地域戦略の基本は、先に挙げた通り、まずは紙の地図を広げる事から始めます。
その地図上に、現在の営業範囲に線を引いていきます。
さらに、現在の顧客や見込み客について印を付けていきます。
こうすることによって、現在や今後の見込み客がどこにいるのかが、一目瞭然で認識できます。
ここまで出来たら、今度は市場を細分化します。
これまでのエリアを一括りに捉えるのではなく、営業範囲を細かく分けていきます。
要は狭い範囲に絞りこんでいくということです。
さらにそこから重点エリアを設定します。
その際の重点エリアの設定方法は、まずは「勝ちやすきに勝つ!」が基本です。
つまり、自社が強みを発揮できるエリア、競合が弱いところ、自社が勝てそうなところ、勝ちたいところ・・・
理由は様々かと思いますが、いずれにせよ、まずは勝てるところで勝っていくということを意識して下さい。
小さくてもまずは「NO.1」になれるエリアを創っていくことで、自信も付いていきますし、勝ち癖も付きます。
とにかく重点エリアを決めてからには、そこに“一点集中”していきます。
その後、そこで「NO.1」になったら、細分化した中から次の重点エリアを選定し、また同じように集中していきます。
このように、“各個撃破”的な発想で、細分化したエリアの中で1つ1つ「NO.1」地域をつくっていくというわけです。
おわかりいただけましたでしょうか?
もちろん、プロジェクターや電子黒板など複数人で投影しながら見ていくという方法も有効ではありますが、話し合いながら、即書き込みながら・・・といった原始的なやり方が、意外にも思わぬ気づきを得られたりするものです。PCのモニター上からは視認できなかった状況がここから見えてくるというわけです。
●地域戦略の目標と5原則
最後に地域戦略の目標と5原則について解説しておきましょう。
1.一点集中主義の原則
※まずは、1位になれる重点エリアを決めていきましょう
小さな市場、狭い範囲でも構いませんので、まずは自分たちが1位のエリアを創っていくことに集中するこ
とです。
2.足下の敵攻撃の原則
※極力ライバルの少ない状態のエリアを重点エリアとして選定しましょう。
自分たちと同等、あるいは、ちょっと下の競合をライバルとし、そこの顧客を奪うことを視野に入れ実践していくことです。
3.地盤強化の原則
※まずは地元をしっかり固めましょう。
弱者がいきなり全国展開だ、広域でビジネス展開だといったところで、そうは上手くいかないものです。
それはこれまでも書いてきた通りです。
まずは、しっかりと自分たちの足元、お膝元を固めることから取り組んでいきましょう。
自社の地元で「NO.1」を創れなければ、よそで「NO.1」を創ることは至難の業です。
4.「NO.1」キープの原則
※大口顧客やリーダー格顧客を確保しましょう。
これは、自社の営業エリアにおけるもっとも影響力のあるリーダー格顧客や大口顧客を押さえておこうと
いう発想です。そのエリアで影響力のある取引先を持つことは、自社にとっての信用力にもつながり、紹
介なども受けやすくなります。何かと仕事がやりやすくもなりますので、意識したいところです。
5.固定化の原則
※一度取引が始まったお客さんの離脱をなくしていきましょう。
せっかく取引が始まったにもかかわらず、ちょっとしたことでお客さんが離脱してしまっては、これまでの
苦労が水の泡です。 確かに新規顧客は取引が始まるまでが大変であり、そこで燃え尽きてしまい、あと
は宜しく!といった営業担当者をお見受けすることが有ります。
あくまでもここからがスタートであるという意識を持ち、顧客が離脱することが無いよう、しっかり満足度を高めていくことを意識しましょう
以上、今回は地域戦略の基本的な取り組み方について解説させて頂きました。
是非、実践に生かしてみて下さい。
NPOランチェスター協会常務理事 副研修部長(認定インストラクター)
相模女子大学非常勤講師、 澤田経営道場講師兼選考委員
ランチェスター戦略学会役員 リレーションステージLLP(代表)
広告代理店にて、営業・プランナーとして数多くの大手メーカー及び
流通企業等の成功企画を手掛ける。
雑誌・TVなどにも取り上げられた企画も多数。
現在はコンサルティング及び研修講師をはじめ、
執筆・講演など幅広く活躍中。相模女子大学では
「メディア産業論」「e-ビジネス論」の講義を担当。
ライフワークである「戦国武将・幕末維新に学ぶシリーズ」も人気講座として定着。
公益財団法人澤田経営道場のカリキュラム及び教育全般も担当。
その他、マーケティングカレッジ等でもレギュラー講師を務める。
●主な著書等
『ジャパネットたかたすごい戦略』(あさ出版)
『しくじり企業も復活する7つの大原則』(ビジネス社)
『まんがで身につく!ランチェスター戦略』(あさ出版)
他多数
【リレーションステージ】
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