『“弱者逆転の法則”ランチェスター戦略入門シリーズ⑦』
【VOL7】 3つのグランドルール
ランチェスター戦略を実践する際、守るべきグランドルールともいえる「3つの結論」というものがあります。
1つ目が「一点集中主義」、2つ目が「足下の敵攻撃の原則」、そして3つ目が「NO.1(ナンバーワン)主義」です。今回はこれら「3つのグランドルール」について解説致します。
● 「一点集中主義」 ~まずは1つに絞り込む!~
戦略の入り口で重要なことは選択と集中です。
弱者であれば、まずは勝負する市場を1つに絞り、そこに集中しなくてはなりません。
まずは、どこで戦うのか?
その戦場を定めなければ戦い方は見えてきません。
勝敗は「競合局面における相手と自分の力関係」によって決まります。
まずは、「勝ちやすきに勝つ!」
少しでも自社の得意領域、優位となる領域を見つけ、そこに兵力を集中し勝負していきましょう。
具体的には、「商品」「地域」「流通」「顧客(客層)」等を絞り込み、そこにリソースを「集中」していきます。
「質的要素」及び「量的要素」を他に分散させず、そこに集中させることで、競合に負けない状況を構築することが可能となります。
とはいえ、一点集中主義はリスクが伴います。
確かに分散化を図ることでのリスクを回避するという考え方もあります。
ただ、一点集中はあくまでも突破口としての意味であり、永遠に1つに絞れということでは有りません。
もちろん、1つの市場のみを永続的に取り組むという選択肢もありますが、これは何を目指すのかという経営方針次第といえるでしょう。
いずれにせよ、まずは1つの市場で勝てなければ、恐らくどの市場でも勝てない。
そのようにお考え下さい。
そもそも兵力が少ない弱者が、初めから兵力を分散してしまったら、突破口も見えません。
「大きな市場で小さなシェア」ではなく、「小さな市場で大きなシェア」。
まずは、このことを意識しましょう。
●「足下(そっか)の敵攻撃の原則」 ~攻撃目標と競争目標は分離~
「足下の敵」とは、市場シェアが自社よりも1つ下の競合を指します。
これを叩くことを「足下の敵攻撃の原則」と言います。
心情的には、下を見るよりも上を見て攻撃を仕掛けたいものですが、これが大きな罠に陥る原因にもなります。上位企業との差が拮抗状態にあれば話は別ですが、そうではない場合、上に勝負を挑むのは時期尚早と言わざるをえません。
先ずは「勝ちやすきに勝つ!」この発想が重要です。
では、さらに下位の企業を攻撃すればいいのでは?
・・・とお思いになられたかも知れません。
しかし、ランチェスター戦略では、シェア差間を非常に重要視していることは既に解説してきた通りです。
したがって、即下の企業。すなわち「足下の敵」との間に開きがないまま上位企業に戦いを挑めば、その間にそれこそ足元をすくわれかねません。
その開きとは、具体的には局地戦なら“3倍”、広域戦ではなら“√3倍”(約1.7倍)を指します。
仮に、足下の企業を叩き、その売上げを奪えれば自社がその分シェアアップし、逆にその分足下の企業がシェアダウンします。
つまり、自社と即下位の企業との差が広がることで、その地位が安定してくるという利点が足下の敵攻撃にはあるということです。
皆さんも、ビジネス領域と定めた市場において、自社が置かれている市場地位をしっかり理解し、仕掛けるべき攻撃相手を見極めて下さい。営業担当者などは特に、自身の営業エリアにおいての足下の敵、顧客内シェアにおける足下の敵、これをまずは把握しておくことが求められます。
●「NO.1(ナンバーワン)主義」 ~ダントツ1位を目指す!~
ランチェスター戦略の最終目標は、「NO.1」(ナンバーワン)になることです。
但し、ランチェスター戦略でいうところの「NO.1」はただの1位では有りません。
2位以下を圧倒的に引き離した「1位」。つまりダントツの1位です。
これのみを「NO.1」と呼んでいます。
但し、これは総合力で「NO.1」を目指しましょうということでは有りません。
どんな小さな市場でも、どんなに小さな領域でも構いません。
まずはここだと決めた市場において、ダントツの1位、すなわち「NO.1」になることです。
これが「NO.1」(ナンバーワン)主義です。
しかし、これではやや抽象的過ぎます。
何を持ってダントツの1位なのか?
これにも明確な定義付けがあります。
①2社間競合、単品の客内シェアであれば1位と2位との間に「3倍」差。
②それ以外は、√3倍(約1.7倍)の差を2位に対して付けた1位。
これを「NO.1」と呼びます。
仮に、1位であっても2位との差が少ない場合、その地位は安定せず、2位との値引きやサービス合戦などの消耗戦になる可能性が高くなり、収益性なども悪化していきます。
したがって、2位を圧倒する「NO.1」を目指すことが求められます。
弱者であれば、当然、総合的な1位を目指す必要はありません。細分化した小さな市場で構いません。
全体ではなく、部分の視点をもち、そこで「NO.1」を目指すということです。
「NO.1」になれば、収益性、安定性、成長性も増します。
仮に拡大を目指すのであれば、そこで、十分な勢いを持って、次の市場を目指して行けば良いのです。
極論をいえば、この「NO.1」づくりこそランチェスター戦略の目的とするところです。
チームや組織などにおいて、よく言われることですが、小さくても勝ち続けることによって、
勝ち癖というものが付いていきます。
こうした小さな成功体験が、チームや組織にとって自信となり、次の勝ちへと繋がっていくのです。
もちろん、自社にとって、採算性が合わないくらい小さすぎる市場では経営判断が問われます、
今は小さくても将来的に成長していく市場もありますので、その辺りはしっかり見極めましょう。
以上が3つの結論となります。
最後にまとめておきましょう。
まずは、定めた市場に対し、資源を分散させず、一点集中していきます。
また、競合を見渡し、自社の位置付けを確認した際、足下の敵との差が3倍あるいは、√3倍差が付いていなければ、まずはそこを叩くことから始めていきます。
そして、最終的にはその市場におけるダントツの1位、すなわち2位との差に3倍、あるいは√3倍差をつけた「NO.1を位目指していきます。
これが、ランチェスター戦略3つの結論(グランドルール)です。
NPOランチェスター協会常務理事 副研修部長(認定インストラクター)
相模女子大学非常勤講師、 澤田経営道場講師兼選考委員
ランチェスター戦略学会役員 リレーションステージLLP(代表)
広告代理店にて、営業・プランナーとして数多くの大手メーカー及び
流通企業等の成功企画を手掛ける。
雑誌・TVなどにも取り上げられた企画も多数。
現在はコンサルティング及び研修講師をはじめ、
執筆・講演など幅広く活躍中。相模女子大学では
「メディア産業論」「e-ビジネス論」の講義を担当。
ライフワークである「戦国武将・幕末維新に学ぶシリーズ」も人気講座として定着。
公益財団法人澤田経営道場のカリキュラム及び教育全般も担当。
その他、マーケティングカレッジ等でもレギュラー講師を務める。
●主な著書等
『ジャパネットたかたすごい戦略』(あさ出版)
『しくじり企業も復活する7つの大原則』(ビジネス社)
『まんがで身につく!ランチェスター戦略』(あさ出版)
他多数
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