仕事に差をつける!営業心理学 【前編】

  • ツイート
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

自分のモチベーションを高め、維持する

新年度になり、新しい職場や人間関係の中で新しい仕事が
スタートしました。自分の壁を克服しながら着実に成長する
ために、営業心理学を理解した上で、モチベーションを高め、
維持する自己管理能力を身につけましょう。


バランスの取れた心身の状態で仕事に取り組むカギとなるのが、
「モチベーション」です。ビジネスにおいて使われる
「モチベーション」とは、一般的に「動機付け」と解釈されます。
これは、人が目標などに向かって行動するための内的
エネルギー、つまり「意欲」や「やる気」を指します。

「モチベーション」を一定に保つことが、安定した状態で
仕事に取り組む上で不可欠な要因です。しかし、人生には
いろいろなことが起きますし、人はそれほど強くありません。
「モチベーション」に波があるのは、人として自然なことだと
言えます。それでも、報酬を得て働く以上、私たちは
みなプロの仕事人。最低限でも求められるレベルの仕事を、
できればそれ以上の成果で自分の存在価値を示したいものです。

そこで今回から二回にわたって、営業心理学を活用した
「モチベーション」の高め方や保ち方について考えてみましょう。
前編では、自分自身の「モチベーション」に関してぜひ知って
おきたい二つの法則、『ヤ―キース・ドットソンの法則』
『プラシーボ効果』をご紹介します。


大きい目標と小さい目標を持つ

『ヤ―キース・ドットソンの法則』

『ヤーキーズ・ドットソンの法則』とは、イギリスの心理
学者であるロバート・ヤーキーズとJ.D.ドットソンが、
ネズミを用いた実験で導き出した生理心理学の
基本理論です。その定義は、「学習活動に対する
動機づけは、適切なレベルにあることが必要である」、
つまり「ストレスレベルが高くなるに従って
パフォーマンス(成果、実績)は向上するが、最適レベルを
越えてストレスレベルが高くなりすぎると、パフォーマンスは
逆に低下する」というものです。言い換えるなら、
最高のパフォーマンスをするためには、ある程度の
緊張感が必要だが、一定以上の緊張感は逆効果である

とも言えます。

例えば、次のようなルールがあると仮定します。

①10日連続で受注をとる。特に報奨金は無い。

②10日連続で受注したら、報奨金1万円。

③10日連続で受注したら、報奨金100万円。
 しかし1日でもはずしたら罰金100万円。

この中でおそらく②が、もっとも現実的で実現可能な
ルールでしょう。①ではやる気が出ませんし、
③は現実的ではなく「失敗したらどうしよう」と営業マンは
委縮してしまいます。ある程度の「動機づけ」は
「集中力の向上」という形で良い影響をもたらしますが、
限度を超えた「動機づけ」は「過度の緊張」をもたらし、
かえってパフォーマンスを悪化させるリスクをはらんでいます。

例えば、なかなか目標が達成できない営業マンがいた
とします。彼は「今期こそは、目標を200%達成する!」と
「大きな目標」を設定しました。
しかし1カ月が過ぎても思うような結果が出ず、
「この調子では200%なんてとても無理だ。
今期もきっと目標達成できないだろうな…」と、早くも
モチベーションが下がってしまいました。

理想と現実とのギャップがあまりにも大きすぎると、
人は現実の厳しさに負けてやる気を失う恐れがあります。
もちろん、「大きな目標」を持つことは悪いことでは
ありません。ただ、本気で「大きな目標」を達成しようと
思うのなら、「大きい目標」と同時に「小さい目標」を
持つことが、モチベーション維持のポイントです。

ここで言う「小さい目標」とは、「大きい目標」を
達成するためのプロセスで、具体的な「行動目標」や、
達成感を得やすい「適度な目標」
などがこれに当てはまります。

例/毎日3枚お客様にハガキを書く、
毎日5件アポイントをとる、毎日1件受注する

「大きな目標」と「小さな目標」を具体的に設定し、
「小さな目標」をコツコツと達成しながら達成感を
積み重ねていくことが、モチベーションの維持に
とても役立ちます。また、「大きな目標」「小さな目標」が
いずれも次の5つの条件をクリアしているか
照らし合わせながら、「良い目標」を設定してください。
良い目標の、5つの条件

1.実現可能である

2.安易すぎない

3.社会性・倫理性に問題がない

4.定量化できる

5.期限が決まっている


思い込みを利用する

『プラシーボ効果』

『プラシーボ効果』とは、対象者に特定の感情を
思い込ませることで、実際にそれが体感できる
「錯覚効果」のことです。例えば、栄養剤を鎮痛薬と
思い込ませるだけで、約3割の患者に鎮痛効果が
認められたという有名な医療分野の調査報告が
あります。また、小麦粉を風邪薬と思わせて飲ませ、
風邪が治ったというケースも報告されています。

営業場面における『プラシーボ効果』の活用例
としては、自分が「良い商品だ」と思いこめば
売上につながりやすく、思わなければ売上に
つながりにくいという実例があります。
人は、ちょっとした感情の違いが外面にあらわれ、
それが営業効率やクロージング力を大きく左右します。
特に新人営業マンは、まず自分が手がける商品や
サービスの良さを、しっかりと理解してから
営業に行くことをおすすめします。

例えば、100件の顧客リストがあるとしましょう。これを漠然と
100件の顧客リストと認識するのではなく、「50件は見込み薄、
50件は多少の見込がある」と想定して仕事に臨むことで、
結果は違ってきます。見込みのあいまいなリストに漫然と
向かうより、すでに50件の見込が顕在化している方が、
モチベーションは自然に上がります。顕在化した見込みに
対してどうアプローチすればよいか、知恵のしぼり甲斐があります。

また、「連休最終日は、翌日からの出勤に備えてどこにも
出かけず自宅にいるという人の割合が高い。ゆえに直接対面
できるチャンスが多く、商談や成約のチャンスが増加する」と
想定することでモチベーションが上がり、いつもより契約が
増えた実例もあります。目の前の事実をいかにとらえるか
という考え方によって、結果は違ってくるのです。
具体的で前向きな、良いイメージを持つ
いわば「自己暗示」が大切になります。

たとえ周囲があなたの可能性をさほど信じていなくても、
あなたが自分を信じていれば大丈夫。自分を信じることが、
自信」です。つまり、自信とは「自己信頼」の略だと覚えて
おいてください。自分で自分の可能性を本気で信じ
続けることができれば、必ず何らかの結果が得られます。
むしろ、うまくいっていない人は
「自分を信じていない人=自信がない人」と言えるかもしれません。
だから、まずは自分を信用することから始めてください。
あなた以上に、あなたを信用してくれる人はいないはずです。

お客さまに対しても、『プラシーボ効果』は応用できます。
実際の営業場面で、同業他社や同規模企業の事例を
営業トークにすることは良くあります。自分のお客さまの
事例だけでなく、先輩や上司の事例をあたかも
自分が経験したかのように話す、あるいは
お客さまに合わせて微妙に脚色する場合もあるでしょう。
これらは100%事実ではないかもしれませんが、
嘘でもありません。TPOに合わせて、お客様が理解しやすい、
また本当に伝えたいことが伝わりやすい表現をすることも、
一種の『プラシーボ効果』
なのです。

とは言え、あまりにもはっきりとした「嘘」はダメです。
あくまでも事実と大きくかけ離れない、
大げさではない「自己暗示」「他者暗示」の表現として、
『プラシーボ効果』を活用するよう心がけましょう。