KPIを活用して、目標を達成する~KPI設定のステップと読み解き方~

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前編では、目標達成プロセスを適切に管理するKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)の概要と導入メリット、代表的な設定例についてご紹介しました。後編では、より具体的な設定ポイントや、KPIから読み取るべき点を考えてみます。


◆最適なKPI 設定のステップ

営業活動の進捗状況を数値化し、目標達成プロセスを適切に管理する、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)の導入メリットは、理解していただけたことと思います。しかし、どのKPIを設定したら良いかは大いに悩むところです。そこで、あなたのチームにとって最適なKPI を見つけるステップをご紹介します。

①自社の組織構造を整理する

まず、営業組織の構造を確認します。何チームあり、どのような基準で分けられているか。電話営業・訪問営業など役割別か、あるいは業界や地域・規模別か。また各チームのメンバー数は何人か…等々。チームが一つの場合は、各メンバーの役割や他メンバーとの関係も整理します。

②仮説を立てる

次に、チームやメンバーの課題について、自由な発想で仮説を立ててみます。仮説に至らなくても「営業のアプローチ段階に問題がありそうだ」、「アポイントは獲得できてもクロージングに至らない」、「成約件数は多いが取引単価が低い」など、問題点や改善点のリストアップで構いません。具体的なKPI を導き出す準備段階なので、直感で書き出してください。

③担当者にヒアリングをする

書き出した問題点・改善点や仮説をもとに、チームリーダーやメンバーと個別ヒアリングを行います。そこでは見えなかったポイントを聞き出すことに注力してください。

◎成約にはどんなアクションが必要か

◎成約案件に共通する要因、成約を感じさせる相手のサイン

◎営業プロセスで、うまくいっていない点

◎重要だとわかっているが、できていない取り組み   など

④ プロセスごとに理想の数値を設定する

明示された売上目標とは別に、仮説や個別ヒアリングを通じて、営業プロセスにおける課題や改善点、実現可能な目標が見えてきたはずです。それを図式化し、目標から逆算しながらそれぞれの営業プロセスにおける理想の数値を設定します。さらに、その目標達成に必要なアクションを細分化し、測定すべき指標としてKPIを設定します。

⑤ 優先順位の高い、4つのKPI

設定した指標のうち、課題解決に集中できるよう、特に優先順位の高い4つのKPI を選択します。

⑥ 計測できる体制を整える

絞り込んだ4つのKPI を、どのように計測するか考えます。自動的に記録管理できる指標、計測に新たな仕組みが必要な指標などいろいろあるでしょう。また、確認する頻度やレポートの形式も考えなければなりません。導入後も円滑に活用できるようになるまで一定の時間がかかります。あきらめずに「KPIを活用する」という心構えで臨んでください。

営業部門の代表的なKPI例

平均受注単価(客単価)、個人売上高、顧客満足度、商品・サービスの市場認知度、問い合わせ件数、コンタクト件数、訪問件数、新規顧客獲得件数、商談件数、受注件数、成約までの平均日数、受注率(成約率)、リピート率、リピーター率、売上達成率、商品・サービスの市場占有率(市場シェア)、他

◆KPIから何を読み解くか

KPIから何を読み解くかについては、あなたが理解するだけではなく、メンバーとも認識を共有しておくことが重要です。

①新規リード数

営業努力で獲得したものではなく、広告やマーケティング活動を通じて営業チームにもたらされた新規リード数を意味します。総数だけではなく、経路別に数を把握しておくことが重要です。売上が思うように上がらない理由として、そもそもリード数が不足している可能性もあります。その場合は、増員などの営業力強化より、リード数をいかに増やすかを検討すべきです。

②見込度が高い案件数

見込度の測り方もいろいろで、中でも見積もり提示数を目安にする会社が多いようです。確かに見積もり提示数はわかりやすい指標の一つですが、ある程度レクチャーが必要な商材の場合、見積もり提示以前の段階で測定する方が実態に即しているかもしれません。例えば「課題のヒアリングが済んでいる」、「ヒアリングに即して提案している」という2点は、見込度が高い営業案件の基準になります。この場合、ヒアリングを基に作成をした提案数がKPI です。目標に向かって効率的な動きができているかどうかの判断材料になります。

③見込客コンバージョン(成約)率

すべてのリード数を基にした一般的な成約率ではなく、②の「見込度が高い案件数」を基にした成約率を算出します。

《見込客コンバージョン率 =見込度が高い案件数÷全成約数》

ここでリード総数を使ってしまうと、リードの質が低い場合、コンバージョン率が低くなり、真の営業力が見えにくくなります。見込客コンバージョン率は、提案内容の質や見込度の判断基準など、真の営業力を見直すきっかけになります。「見込度が低いのに提案していないか」といった課題や、ヒアリングの質についても検証しましょう。

④新規売上

総件数や総売上だけではなく、例えば「新規顧客の売上」、「既存顧客の売上増加分」、「契約更新による売上」などを測定することで、営業活動のターゲット設定、活動の優先度、時間配分などのヒントが得られます。

⑤メンバーの担当案件数

総案件数と各メンバーの担当案件数をチェックしましょう。少ない場合は、新規リード数を増やす必要があり、他の業務を担当する余裕があるかどうかもわかります。また、多すぎる場合は活動の質が下がり、やがて効果的な活動ができにくくなる恐れがあるので、事前対応が求められます。この指標を長期的に測定することで、メンバーの力量に合った適正な案件数が見えてきます。

⑥平均取引額

市場の背景や傾向、真の営業力を見極める上で良い指標です。平均取引額が減少傾向にあり成約率が高い場合は、早めにターゲット企業の見直しや営業体制のテコ入れなど、営業戦略の見直しも視野に入れましょう。また、成約率を上げるため割引を多用した結果、平均取引額を下げることもあります。反対に平均取引額が大幅に上昇した場合も、要因を丁寧に探り、営業活動のプロセスや手法について再検証することが大切です。

⑦営業サイクル

営業サイクルとは、成約までに要した平均日数です。全体の日数だけでなく、営業プロセスごとの平均日数も測定しましょう。平均日数よりも長くかかっている場合、成約率が低下し、目標達成に影響するケースが多くなります。

⑧その他、営業活動に関する指標

メンバーが多い場合は、営業活動に関する指標を毎日確認し、必要なサポートや指示をします。よりきめ細かなものとして、以下の指標があります。

活動数
訪問件数、電話発信数、送信メール数など、営業マンの活動量を示す数値

効率度
通話率、アポイント獲得率、訪問率など、総案件における活動効率を示す数値

目標達成率
売上目標、アポイント獲得など、与えられた営業目標の達成度を示す数値

以上を参考に、組織の状況や課題に応じて必要なKPIを選択してください。大切なのは、選択したKPI を一定期間継続して使い続けること。長期間測定することで、見込度やリスクが見えやすくなります。また、売上予測や目標設定も容易になります。KPIを活用し、「営業活動の状態」「案件の進捗状況」「結果分析」の側面から組織を把握する。それが目標達成プロセスを適切に管理する上で、大切なポイントになります。