目標達成へのプロセス管理 ~達成過程を適切に管理する、KPIとは~

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企業には、部署やチーム・個人それぞれに目標があります。この目標を達成するために重要な指標として活用されているのが、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)です。今回は、目標達成のプロセス管理に役立つKPIについて考えてみます。


KPIを正しく理解する

事業を進めることによって、さまざまな計数データが発生します。そのうち、部署・チーム・個人それぞれの目標達成において、業務プロセスが適切に実行されているか適切に計測する指標が、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)です。

例えば、営業や販売といったセールスマーケティング分野では「新規顧客獲得数」「新規受注獲得数」、製造分野では「製造原価」「在庫保有期間」、サポート部門や管理部門では「顧客満足度」「従業員満足度」など、さまざまなKPIが設定されます。

また、KPIとともによく使われる指標が、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)です。KPIが業務プロセスのパフォーマンス──「過程」を評価するのに対して、KGIは売上や利益、課題の達成レベルなど目標──「結果」を評価します。つまりKPIは、最終目標(KGI)を達成する「過程」を計測する指標だと言えます。

KPIの根底には、「測定できない対象は管理できず、管理できないものは実行できない」という考え方があります。目標達成に不可欠な「過程」を洗い出し、どのくらいのレベルで通過できれば最終目標(KGI)を達成できるか数値で計測するKPIは、目標達成に向けて何をすべきか明確にする優れたツールです。KPIを活用することで、企業は以下のさまざまなメリットを得ることができます。

【KPI 導入のメリット】

◎目標に対する進捗度を可視化できる。

◎取り組みが有効であるか、客観的に評価できる。

◎組織の問題点や停滞要因を洗い出せる。

◎組織内で評価基準を共有できる。

◎チームワークが高度化する。

◎チームミッションへの意識が向上する。

◎業務遂行へのモチベーションが向上する。

◎達成感や自己効力感(いわゆる自信)が得やすい。

KPIの有効な設定に役立つ 『SMARTの法則』

適切なKPIの設定には、先月ご紹介した『SMARTの法則』がとても役に立ちます。

S 具体的で明確
M 測定できる
A 達成可能で、同意が得られている
R 現実的で、関連性がある
T 期限がある
 

◆具体的で明確(Specific)

KPIは、組織やチームが目標を達成するために不可欠な指標です。そのため、KPIに関わる人すべてが、同じ解釈で使用できる明確さが必要です。

◆測定できる(Measurable)

KPIは、定期的に測定・評価分析を行うことで効果を発揮します。測定しにくいKPIを設定すると、確かな計測ができずKPIを有効活用できません。

◆達成可能(Achievable )

KPIが達成可能かどうかは、メンバーのモチベーションに大きく影響します。彼らが実力を十分に発揮できるよう、日頃から自社の経営資源やメンバーのスキルを、正確に把握しておくことが大切です。

◆現実的(Realistic)

たとえ現実的であっても、メンバーに対して一方的に設定したKPIであれば、達成どころか実施すら困難です。メンバーはどのように考えているのか、経営陣や人事部が洗い出したKPIは的外れではないかなど、しっかりと話し合い、相互理解を深めることが大切です。メンバーの声を聞いて、設定するよう心がけましょう。

◆期限がある(Time-Related)

期限のないKPIは動機づけが難しく、目標達成を困難にします。また、評価間隔が極端に短いKPIは、非常に使いづらいものです。目標達成の可能性を高めるには、あらゆる要素への影響を考慮し、適切な評価間隔を設定しなければなりません。

KPIは長期的に計測しなければ、十分な導入効果は得られません。測定間隔は一般的には月単位ですが、業務サイクルが速い企業では週単位や日単位で計測するケースもあります。測定した結果をもとにパフォーマンスを評価し、課題が見つかれば即座に対策を取り、改善策の策定と実施を進めていきます。

明確な数値で設定するKPI

1.有効なKPI設定の前段階として、まずは組織や部署・個人にとって適切な最終目標(KGI)を設定する必要があります。

【設定例】

◎半年以内に、月間売上高1000万円をめざす

◎3年後の年商を、1億円以上にする

◎1年以内に、新規顧客を毎月10件獲得できる営業マンをめざす
最終目標(KGI)は、数ヶ月・半年・1年・数年など短期間で設定される場合が一般的です。実現可能な範囲で段階的に目標数値の難易度を高めると、無理なくステップアップを図ることも可能です。

2.そして、最終目標(KGI)に対応する、KPIの目標数値と評価間隔を設定します。

【設定例】

◎見積もりからの成約率80%をめざす

◎1週間で15件以上の新規訪問を行う

◎客単価を2000円以上にする

◎店舗の月間売上高を700万円以上、通販での月間売上高を300万円以上にする

このタイミングで、計測する間隔(日・週・月など)を設定しましょう。計測間隔は一律に設定するのではなく、KPIの性質に合わせてそれぞれ設定する方が良いでしょう。間隔が開きすぎると、評価忘れなどヒューマンエラーや管理負担を発生させる場合があるので、注意して下さい。

業態別KPI設定例

KPIは、掲げる目標や自社の課題によってさまざまです。「この業種(職種)には、このKPI」とパターン化できるものでもありません。しかし、業態ごとによく使われているKPIがあるのでご紹介します。設定の参考にして下さい。

●営業に関連するKPI例

平均受注単価(客単価)、個人売上高、顧客満足度、商品・サービスの市場認知度、問い合わせ件数、コンタクト件数、訪問件数、新規顧客獲得件数、商談件数、受注件数、成約までの平均日数、受注率(成約率)、リピート率、リピーター率、売上達成率、商品・サービスの市場占有率(市場シェア)、他

●飲食業、店舗販売業に関連するKPI例

平均接客時間、平均購入単価(客単価)、顧客満足度、来店者数、店舗別売上高、店舗・商品・サービスの認知度、広告種類別来客数、問い合わせ件数、利益率、商品原価率、回転率、リピート率、リピーター率(常連比率)、売上達成率、他

●製造業に関連するKPI例

製造コスト(製造原価)、在庫保有期間、改善提案件数、改善件数、生産数、在庫数、注文数、不良数(欠陥品数)、欠品件数、事故発生件数(トラブル発生件数)、原価率、クレーム件数、不良率、時間稼働率、欠品率、生産効率、事故発生率、製造原価率、多能工比率、OEE(総合設備効率)、他

●カスタマーサポートに関連するKPI例

平均対応時間(平均処理時間、平均通話時間)、サポート満足度、入電数(着信数)、商品・サービスの市場認知度、問い合わせ件数、クレーム件数、解約件数、稼働率、応答率、呼損率、クレーム率、解約率(離脱率)、他

●オンラインビジネスに関連するKPI設定例

CPA(顧客獲得単価、顧客獲得コスト)、ROAS(費用対売上高)、ユーザー満足度、Webサイトの認知度、ホームページへのアクセス数(訪問数)、平均ページビュー数(PV数)、直帰率、Webサイト滞在時間、広告種類別訪問客数、平均購入単価(顧客単価)、検索エンジン流入件数、コンタクト件数、コンバージョン件数(新規問い合わせ件数)、コンバージョン率、リード獲得件数(新規見込み顧客獲得件数)、商談件数、商談率(セットアップ率)、販売件数、販売率(営業成約率)、サービス利用者数、継続者数、顧客転換率、リピート率、リピーター率、売上達成率、他


KPIは、目標達成に必要な要素を数値化することで、戦略や施策の有効性を測定可能にする重要指標です。KPIを正しく理解し、適切なKPIを設定することで、目標達成に向かって着実に前進することができます。