『良い目標』をもつ~SMARTの法則を使った、良い目標の立て方とは~
あなたのチームには、明確な「目的」と「目標」がありますか?
「ある」と答えた方に再度お聞きします。
それは子どもでも理解できるほど、明確ですか?
少し極端な言い方ですが、それぐらい誰が見ても理解できる「目的」「目標」であることが重要です。さらにお聞きします。
メンバー全員が、チームの「目的」と「目標」を理解していますか?
会社やチームの「目的」や「目標」をしっかり理解しているメンバーは、実際にはほんのひと握りしかいない、という調査報告があります。これではメンバーは自分の立ち位置や役割がわからず、モチベーションが保ちにくく、能力を十分に発揮できません。
メンバーのモチベーションが安定している会社の特徴は、お客さまの喜びだけではなく、メンバーの喜びも「目的」として明確に明示している点です。そしてメンバー全員が、会社やチームの「目的」と「目標」を理解し、自分の役割を果たすための「目標」と「行動計画」をしっかりと定めています。だからこそ、個々人の行動が着実に業績に結びつくのです。
このように、メンバーがモチベーションを保ちながら存分に行動できるのが、「良い目標」だと言えます。これまで「良い目標」を設定するために、世界中でさまざまなフレームワークが考案されました。
「良い目標」の設定に役立つ SMARTの法則
1981年11月、アメリカの学者・ジョージ・ドランが発表したゴール設定の手法が、「SМARTの法則」と呼ばれるフレームワークです。「SМART」とは、目標達成に必要な5つの視点の頭文字をとったもの。現在では、他の単語をあてはめるさまざまな解釈が見受けられます。
【図表参照】S | Specific | 具体的、明確な |
M |
Measurable Motivating |
測定可能な 誘引づけられた |
A |
Assignable Attainable Agreed upon Achievable |
権限移譲できる 到達できる 同意できる 達成可能な |
R |
Realistic Relevant |
現実的な 関連する |
T |
Time-related Timely Time-specific Trackable |
期限のある 時勢に合った 期限が明確 追跡可能な |
※太字はジョージ・ドランが、細字は他の有識者が当てはめた単語。
つまり、わかりやすくまとめるなら、
S 具体的で
M 測定でき
A 達成可能で、同意が得られており
R 現実的で、関連性があり
T 期限のある
そんな目標が、「良い目標」であると定義できます。
「SМARTの法則」は、目標設定に関する汎用性の高いフレームワークとして、営業部門に限らず、プロジェクトの管理や人事評価など、あらゆる分野の目標設定に応用されています。
では、5つの視点について一つずつ考えてみましょう。
S 具体的であること
「良い目標」は、わかりやすく具体的です。
例えば、「売上を増やす」「スキルアップする」など漠然としたものではなく、明確であればあるほど、目安としての役割を果たす「良い目標」だと言えます。「どの売上を、何を基準に、どれくらい増やすのか」という風に、具体的な数値と根拠を示しましょう。また、「どのスキルを、何のために身につけるのか」という理由も明確にしましょう。
M 測定できること
「良い目標」は、量的に数値化できます。
売上目標の場合は、金額や割合など数値があるので比較的簡単ですが、「営業スキルを身につける」といった目標では数値化に工夫が必要です。
例えば、「プレゼンテーションスキルを磨きたい」という時には
◎プレゼンテーションのロープレを、週に1回行う
◎同僚や上司によるプレゼンテーションの評価スコアを、△ポイント上げる
など、スキルアップに関わる行動や評価システムに落とし込んで、測定可能な目標を設定するよう心がけましょう。
A 達成可能で、同意が得られていること
「良い目標」は、達成可能で納得できるものです。
あまりにも実態とかけ離れた目標は、達成できません。たとえ会社が「売上を倍増する」と思っていても、画期的で新たな商品や営業マンを強力にサポートするツールなど、売上倍増の根拠となる要件が揃っていなければ、達成は不可能です。
もし自分にプレッシャーをかける意味で、「プレゼンテーションの練習を、毎日1時間する」と設定しても、現時点でゆとりのある時間が毎日1時間なければ、達成は厳しいでしょう。自分の能力に対して達成可能かどうかを冷静に見極め、先を読んで目標を設定することが大切です。
また、他者との緊密な関わりで成立する仕事の場合、相手の同意が必要です。相手の同意を得ないまま自分だけで目標を設定しても、相手のモチベーションは上がりません。むしろ無理が生じてミスを起こしたり、関係性が悪化することも有り得ます。事前に十分なすり合わせをして、相手の同意を得た目標であることが重要です。
さらに、他者の同意以上に大切なのは、自分自身の納得です。「上司に言われたから、嫌々ながら立てた目標」とか、「自分で考えたわけじゃないから、達成できなくても仕方ない」といったスタンスでは、達成はおろかモチベーションが低下するばかりです。
重要なのは、「何のために、この目標を掲げるのか」という意義。つまり、目標達成の先にある「目的」に焦点を当ててみて下さい。その上で「新しいスキルが身につく」「自分の強みと弱みがわかる」「チャンスに挑戦してみる」など、自分にとってのメリットが見つかったら、いつの間にかその目標は「人から言われた」のではなく「自分で望んだ」目標になっているはずです。
R 現実的で、関連性があること
「良い目標」は、現実的で実態に関連しています。
目標は常に高く持つべき、という安易な発想は危険です。現実から離れているあまり「どうせ達成できない」とあきらめてしまう可能性が高まります。中には、目標が高すぎて、達成できない自分に自己嫌悪を感じてしまうケースもあります。
また、会社やチームの目標と関連した、個人の目標でなければ意味がありません。例えば会社は新商品の販売を最優先しているのに、まったく関係ない別の商品で目標を立てては、会社と個人との目標にギャップが生じます。あるいは、自分の職務やキャリアプランとはまったく関係のないスキルの目標は、単なる自己満足です。そのような場合は、プライベート目標として別に管理しましょう。
T 期限があること
「良い目標」は、達成期限が明確です。
時間は無限ではありません。私たちは、就業時間や上司の指示、取引先の依頼など、さまざまな制約の中で成果を出すことが求められています。
例えば、「新規開拓5社を、2018年3月20日の営業報告会までに達成する」と期限を数値で表して初めて、明確な目標だと言えます。特に期限がない仕事も、自主的に期限を設定することで、自分で仕事のペースをコントロールできます。期限がなければ、人は気が緩みますが、期限を明確なら「締め切りに間に合わせよう」という心理がはたらき、自己管理能力が磨かれていきます。
「SМARTの法則」は、目標設定だけでなく、目標管理や総括の場面でも大いに役立ちます。いくら頑張っても成果が出ない──誰にでもあるそんな時にこそ、「SМARTの法則」で目標を見直してみてはいかがでしょうか。やみくもに頑張るのではなく、「SМARTの法則」で整理のしかたを身につけ、それに沿って掲げた「良い目標」に向かって正しく努力する。そのプロセスを、ぜひ理解して下さい。
2022.10.07
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