営業担当が安心して訪問できるアポイントレポートの作り方 [MISSION]大手企業 役員クラスのアポイント獲得【後編】
【前編のあらすじ】 (前編はこちら)
コンサルタント会社・F社から提示されたのは、「アポイント設定目標5%」という高い数でした。これに対して私たちは、担当者の協力を得て「リストの質」を高め、エグゼクティブクラスを対象に高い成約率が期待できる「アポイントの質」を追求したのです。今回は、年間契約につながった要因のひとつ「アポイントレポート」について、お伝えします。
世界的知名度のあるコンサルタント会社・F社の新規顧客開拓プロジェクトにおいて、牟田のチームは4月から9月の半年間に、リスト先1793件へアプローチをし、エグゼクティブクラス(役員・取締役・部長)のアポイントを42件設定した。アポイント設定率は2.3%。これはF社が掲げる「設定目標5%」や、牟田たちが日ごろ明示している「平均アポイント設定率4.6%(対リスト件数)」に満たない数値だ。しかし担当者のC氏は数値以上に、牟田のチームがもたらした「アポイントの質」や一連の提案内容、また取り組み姿勢に注目した。そして牟田たちに大きな可能性を感じたC氏は、それまで1か月ごとに更新する形をとっていた契約を、新年度を機に1年間の通期契約にするべく社内を東奔西走してくれた。
「さぁ、これからの1年間、しっかり成果を出しましょう!」
C氏の言葉からはいつしか、単なる取引先以上に、組織の壁を越えて同じ目的をめざす「営業のパートナー」としての信頼関係が生まれていた。
牟田たちが「質の高いリスト」の作成を大切にする理由は、そこから導き出す「アポイントの質」にこだわっているからだ。それは「キーマンに会う=成約率を上げる」ため。つまり牟田たちにとって「アポイントを設定すること」は、あくまでも自らの役割を数値で表す目安(目標)でしかない。見すえているのは、成約(目的)だ。お客さまが望んでいるのは、売り上げに直接結び付くアポイント。牟田のチームではメンバー全員が、お客さまのニーズを明確に意識しながら仕事に臨んでいる。
毎週水曜日、C氏から渡されたリストの担当者(キーマン)宛てに、牟田たちは資料を郵送する。そして週明けの月・火から、クリーニングしていくのだ。担当者につながらなければ、1週間に3回までコールする。何らかのNG回答があれば、事前に決めておいたパターンに分類する。一度もつながらず何ら回答が得られなければ、インターバルを置いて再度アプローチするリストに回す。
アポイントを設定する際、牟田たちは次の8つの項目を、漏れのないようしっかりとヒヤリングしている。
①面会日時
②面会場所 (入館方法もあわせて確認)
③必要な資料部数
④直通番号
⑤メールアドレス
⑥担当者名(部署名、役職、名前の漢字を確認)
⑦面会の理由・背景
⑧その他、先方からの要望
⑧の項目を押さえると同時に、アポイントの取得経過についても、ニュアンスを含めて記録に残している。そして先方の声のトーンや口調からは、人柄や性格・タイプが類推できる。どんなキーワードから会話が展開したのか、話の流れがわかるようまとめておく。会話を通じて感じた相手の雰囲気や、電話を切る際の挨拶など、全体の印象もチェックする。これらの項目をもれなく確認し、的確に感じ取った上で、詳細かつ明快に文章化した「アポイントレポート」で報告する。オペレーターに3年以上の営業経験を求めているのは、商品を売り込むためではない。電話の向こうの相手を、敏感にキャッチするアンテナが求められているからだ。
今一度、お客さまが安心して営業活動に専念できるように牟田たちが作成している「アポイントレポート」を見ると、
次の6つのポイントに集約される。
〈1〉担当者の声のトーン
〈2〉フロントトーク
〈3〉トークの流れ
〈4〉担当者の雰囲気
〈5〉担当者からのご質問
〈6〉最後の印象
私たちはフィードバックされた情報を把握しながら、商談内容を共有し、改善点をチェックしていきます。
このように商談内容の共有と改善検討まで行うことで、まずはお客さまとの間に共通言語ができます。そして共通言語を通して共通認識を共有できるようになれば、近い視点で課題を抽出し、検討することができるようになります。
今回、牟田たちが担っている役割は「アポイントの設定」だが、数だけではなく質を、部分ではなく全体を、表面ではなく深部にまで、お客さまの営業活動をサポートするスタンスを守り続けてきた。お客さまと一緒に案件を育て、お客さまが安心して営業活動に専念できる環境づくり。その姿勢がC様の心を動かし、今回の長期契約につながったのかもしれない。
「パートナーシップ」──それは、プロジェクト達成にもっとも不可欠な要素だと言える。