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学習して進化する組織をめざす ~「know who」で進めるチームビルディング~
~「know who」で進めるチームビルディング~
あらゆるノウハウについて、誰がそれに詳しいのか、専門家なのかを「見える化」する仕組み「ノウフー(以下、know who)」。前編では、その活用が個人のスキルアップを加速させることをお伝えしました。後編では、know whoを通じて高まった個々の力を、いかにチームビルディングに反映させるかについて考えてみましょう。
1. 「know who≒人脈」というとらえ方
know whoが機能しているとは、「このテーマについては〇〇さんが詳しい」といった情報が、チームでしっかり把握できているということです。解決策をメンバー自身が調べるのはもちろんですが、解決策を導き出すのに時間がかかりそうな場合は、問題の背景や解決策のヒントについて専門家の知見を聞くことで、より迅速で確実な対応が可能になります。また、相談できる人が多ければ実践的な知恵が集約でき、それが高度な解決策につながって、仕事の質も自然に高まっていくでしょう。
つまり、know whoは知見を持つ人々から成る〝人脈〟です。優秀なビジネスパーソンは、問題解決にあたって社内外の人脈をフル活用し、高い成果を生み出します。それぞれの人が持つ専門性や手腕などを絶妙にコーディネートすることで、ビジネスのレベルを高めているのです。こうした優秀なビジネスパーソンの仕事の進め方をチームで共有し、実践する考え方が、know whoによるチームビルディングなのです。
2.人脈は、価値ある共通資産
社内にはさまざまな専門家がいて、あらゆる知見が蓄積されています。営業、企画、マーケティング、製造、生産管理、人事、総務、経理など、部門によって必要な知識や技能は異なり、同じ部門でも人によって違います。
社外に目を向ければ、知見は多種多様に広がります。自社の事業に直結する分野に限らず、関連分野や異分野の知識や技術・ノウハウが、課題解決に大いに役立つことは珍しいことではありません。
優秀なビジネスパーソンは、日頃からこうした社内外のknow who(≒人脈)を、コツコツと構築しています。どんな事業領域でどんな仕事に取り組んでいるのか、現在取り組んでいるテーマは何か、何に関心があるのか、どんな成功体験を持っているのか。さらに困りごとや描いているビジョンに至るまで、相手に関心を持ち、その声に耳を傾け、そこで得た情報を整理して自分のknow who(≒人脈)を構築します。そして、自分や誰かが「こんな知識やノウハウが欲しい!」と思った時に、蓄積した情報をもとにknow who(≒人脈)をコーディネートして、問題解決に役立てているのです。
本来、人脈は個人の資産と考えられていました。確かに土台には、個人間の信頼関係があります。しかし持ち主が退職すれば、人脈はそこで途絶えてしまいます。近年〝団塊の世代〟の定年退職によって人脈という価値ある資産が大きく失われた反省から、メンバーが長年にわたって構築してきた人脈をknow whoの視点で集約し、可視化できる共通資産として活用しようとする企業が増えています。
3.know whoで集約すべき情報とは
個人の人脈を組織で活用する場合に、気をつけたいいくつかのポイントがあります。
まず、データベースは詳細な情報を集約しなければ有効に機能しません。単に、交換した名刺の情報を共有するレベルでは不十分です。
例えば、社外のキーパーソンに社内の誰が接触し、どんな関係を構築しているのか。周辺人物とのつながりや、さまざまな関連情報の管理も重要です。ここで詳細な情報を管理することができれば、情報収集業務は格段に簡素化します。結果的に生産性が向上し、働き方改革の一助になるでしょう。何より事前情報を十分に把握できるので、キーパーソンとのやりとりもスムーズに運び、人脈がもたらす効果を最大限に引き出すことが可能になります。
人の紹介は、他者の介入でこれまで築いてきた信頼関係が、一気に崩れるリスクをはらんでいます。紹介してもらう人は、情報の取り扱い、ルールやマナーを守ることに細心の注意を払いましょう。「紹介して良かった」「紹介してもらって助かった」と互いに喜びを感じられるよう、紹介する人と紹介してもらう人は丁寧なコミュニケーションを心がけて下さい。こうした配慮が、人脈を大切にする風土をチームに根付かせます。
4.他者への関心がチームを育てる
チームビルディングとは、同じゴールに向かってメンバーが個々の能力を最大限に発揮し、一丸となって進むための効果的な組織づくりや、組織をまとめる手法です。チーム力を高め、仕事を通してより高い成果を上げる。そのために、「チームの学習効果を高める」という視点がとても重要になります。人にもの覚えの良い人と悪い人がいるように、組織にも学習効果が良い組織と悪い組織があります。
例えば、あるチームが新規事業の立ち上げに成功した後、そのノウハウが組織全体に浸透したとしたら、組織の学習効果は高いと言えます。また、優秀な営業メンバーが後輩に営業ノウハウをシェアする風土が常態化し、着実に後輩が育つ組織は学習効果が高いと言えるでしょう。
組織の学習効果を向上させる上で重要なのは、メンバーが他のメンバー(仲間)に対して関心を持っていることです。「誰が何を知っているか」、「誰が何をできるか」を把握している。たとえ非常に能力が高くても、自分の成長や活躍にしか興味が持てないメンバーでは、チームならではの醍醐味が共有できません。仲間の個性を尊重できる、共感や共有から喜びを得ることができる。こうした他者への関心が、know whoの構築にもっとも影響を与えます。
「以前、似たプロジェクトに関わっていた〇〇君に聞いてみたら?」「この分野の情報なら、△△さんが一番詳しいよ」など、know who を通じた仲間への認知の高さが、学習効果の高いチームを作りあげる最大の要件と言っても過言ではありません。
5. know who構築のカギはリーダーにあり
know whoで進めるチームビルディングでは、リーダーが成否のカギを握っています。
従来型組織のリーダーシップは、誰よりも経験豊富で最も答えに近い存在のリーダーが、メンバーに命令してチーム全体の行動を統制し、意思決定はリーダーが行っていました。しかし劇的に変容する時代にあって、もはやそのようなトップダウン型のチームでは機能しにくいことは、十分に予想できます。
今、求められているリーダーは、自分がすべての答えを持っていないことを自覚していて、メンバーの協力がなければチームが機能しないことを理解しています。そのため、自分の限界を隠さずどんな事も率直に話し、メンバーの声をよく聞き、アイデアの共有を大切にしています。このようなリーダーのもとでは、メンバー自身がリーダーに依存することなく、リーダーシップを発揮するようになります。
◆チームビルディングを確立する6つのポイント
①目的、目標、仕事の進め方をメンバーに意識させる
「意識させる」だけで「指示する」のではない。
②メンバーに、コミットメントと自信を持たせる
日頃から、ポジティブなフィードバックを実践する。
③スキルの多様性とレベルを強化する
メンバーの多様なスキルを互いに磨かせ、成長を奨励。
④know whoでチームを取り巻く障害を事前に取り除く
サポートしてくれる人脈(know who)を構築する。
⑤メンバーにチャンスを与える
「責任はリーダー、手柄はメンバー」の基準で判断し、
メンバーが小さな成功体験を得られる機会をつくる。
⑥自ら動いて、汗をかく
リーダーは、メンバーと一緒に考え、行動する。
メンバー各自がスキルアップを意識しながら「仕事の質」を追求する上で、know whoは大きな力になります。他者の力を借りることで経験値を高め、力を磨く。得意分野や持ち味を考えつつ、チームに足りない要素を自分が補う気概を持つ。より高い成果を求めて仲間と切磋琢磨する中で、プロフェッショナルとしての意識が培われていくことでしょう。
価値ある情報が使用されていない、必要な時に必要な情報が見つからない、誰に何を聞けば良いのかわからない──。こうした状況こそ、人的資源や知的資源を無駄にしていることに他なりません。課題に直面した時、もっとも頼りになるのは人脈です。誰に聞けば良いかわかることで無駄な動きを無くし、的確なアドバイスを得ることが可能になります。社内に眠る「暗黙知」や専門知識・ノウハウといった「知見」をしっかりと活用するためにも、know whoの本格導入に着手してはいかがでしょうか。
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